本年4月から子育てなる手帳が、妊産婦や中学生までの子を持つ親に文部省から配布される。家庭教育は、幼児期からの心の教育であると言う理由からだ。
心安らぐこんな話をうかがった。東京で学生生活を始めた娘が久しぶりに帰省。迎えに来て欲しいとの電話。「家族で美味しいケーキ食べよう、買ってきてね。」と父は娘に告げて帰りを待つ。
家族団欒、久しぶりの和やかな夕食となり、娘が買ってきたショートケーキを家族6人で食べることになる。実は、家族の数に1個多い7個のケーキを買ってきたことが、親にとって大変嬉しく、心が和んだと言う。というのは、娘がさりげなく仏壇の祖母にケーキを供えたからである。
親にとって、土産を買って帰る娘に成長の喜びを覚えると同時に、今は亡き祖母へのお土産には、さぞ嬉しかったに違いない。
家庭教育はまさにこのようなことである。孫は幼い頃、祖母の愛情を体いっぱいに受け、今や大学生になり、幼い頃に別れた祖母への思い、感謝が家族の数にプラス1個のケーキとなって表れたのであると確信できる。
人は死んだらどこへ行くの?子孫を愛した先祖のいのちは、子孫の心の中へ行くと言う。先の話で、祖母は、孫を愛し慈しむ心でこの世を生きた人であろう。だから、孫の心の中に祖母のいのちが生きているのである。
生きると言うことは、如何にどう生きるかである。
大雄寺住職 倉澤良裕 記す