黒羽山大雄寺は、栃木県北部の那須、黒羽にある曹洞宗の寺院であります。
室町時代中期、旧黒羽に創建され、黒羽藩主大関家菩提寺として文安5年(1448)に再建されました。
その後、天正4年(1576)に黒羽城築城と共に、黒羽藩主大関高増により現在地(栃木県大田原市黒羽田町450番地)に移築されました。
本堂、禅堂、庫裡、総門、回廊、鐘楼堂など当時からの伽藍の全てが、茅葺き屋根で保存され栃木県有形文化財(昭和44年2月4日)の指定を受けています。
本堂は、正面十二間、側面八間、寄棟、茅葺。
禅堂は、正面五間、側面五間、寄棟、茅葺。
庫裡は、桁行十三間、梁間七間、入母屋、茅葺。
総門は、薬医門、寄棟、茅葺。回廊は、茅葺。
鐘楼堂は、正面一間、側面一間、入母屋、茅葺。
また、全国でも数少ない経蔵と輪蔵内の一切経四千五百巻も昭和42年12月22日に栃木県有形文化財の指定を受けています。
経蔵は、正面五間、側面六間、方形、銅版葺、向拝正面一間、土蔵造。
文化財指定当時、伽藍の老朽化が進み、深刻な状態のため、まず、最初に鐘楼堂の保存修理を県補助事業として開始しました。
昭和42年から開始した七堂伽藍保存修理事業は、25年間という長い年月を要し、全ての伽藍が室町期の建造物として蘇ることとなりました。
茅屋根保存には、多くの諸問題があります。
例えば、短い耐久年数や可燃性の危機、茅職人の技術の継承、材料確保、高価な費用など不安が山積しています。
保存修理事業より約20年経過した本堂や廻廊を平成6年より破損、腐食を進行させないよう再度保存修理や補修工事(差し茅工事)を継続しています。
この平成6年からの保存修理事業は、全国各地の茅屋根の神社仏閣を専門とする宮城県(有)熊谷産業に依頼し、保存修理と補修工事(差し茅工事)を実施してきました。
今後も諸堂宇の護持に努力していく覚悟であります。
大雄寺は、禅宗(曹洞宗)寺院の伽藍配置とおり人体の頭部に本堂、右手に禅堂、左手に庫裡、本堂正面に総門、総門左右に取り付く回廊はこれらを結び、回廊に囲まれた境内の中に鐘楼堂を配し、回廊外に経蔵があります。
伽藍焼失を免れた室町期の伽藍が保存され、茅屋根の素朴な佇まいに、訪れる参拝者に驚きと感動を与え、開かれた寺院として、参拝の受け入れや坐禅研修などに多くの人々が訪れています。
また、大雄寺には多くの寺宝を所蔵し、仏像・仏画等は、栃木県文化財指定や大田原市文化財指定を受け大切に保存してきました。
平成15年宝物の収蔵と展示公開が可能な宝物収蔵庫の建設に着手し、平成16年に完成しました。
現在、日本の伝統文化である茅屋根の七堂伽藍を県文化財の指定を受けて保存していますが、全国でもたいへん貴重な建造物であり、是非とも国の重要文化財指定として保護されますことを強く願うものであります。